ふらあそ!

ゲーム好き・漫画アニメ好き・自転車好き・鉄旅好き。インドアだったりアウトドアだったりのふらふら遊び人の日記帳、略してふらあそ!

【アニメ】魔法つかいプリキュア!/総評

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先日、大団円を迎えた魔法つかいプリキュア(以下まほプリ)。

まずは極めて個人的な事なのですが、当ブログで感想記事を1年間完走して書く事が出来た初の作品*1であり、色々感慨深いものがありました。

今回は全50話で紡がれた魔法使いの物語を振り返りつつ、総評をしていこうかと思います。

ちなみに、かなりの苦言を呈する事になるかと思います。この作品が好きな人などは回れ右した方が良いかもしれません。それを踏まえた上でご一読いただければ幸いです。

 

↓以下長文注意

 

キャラクターについて

掴みどころのないメインヒロイン:朝比奈みらい/キュアミラクル

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まずシリーズ通してどうしても見えてこなかったのが、メインヒロイン・朝比奈みらいの性格でした。最初のうちこそ、明るく素直で歴代ピンクヒロインの普遍的な性格かと思われましたし、第5話のリコとの喧嘩回では非がないみらいがかなりの譲歩を見せるなど、優しい性格が垣間見えました。

しかし、序盤の魔法学校編が終わり、敵の攻撃がしつこくなってくると、突然キレだしたり、なんかズレている部分で怒りをあらわにしたりと、どうにも沸点が低いのでは? という話が多くなりました。

もちろん彼女がDQNという訳ではありません。怒る理由の大半が今まで触れ合った人たちや友人らを傷付けた事に起因している事は間違いなく、その点に関してはぶれてはいなかったのですが、その怒りの原因が象徴的なものに対して起こる*2事が多く、敵側の「なんでそんな事で怒るんだ?」「どうしてそんな事をするんだ?」という感情を視聴者側にも与えてしまいました。

それならそれで良いのですが、さらに困った事がありました。というのも、みらい=キュアミラクルって歴代プリキュアの中でも珍しく最後の最後まで弱みを全く見せなかったヒロインなんです。

とにかく、やる事なす事なんでもかんでも上手くいき過ぎるし、いざと言う時になると戦士の顔をのぞかせて戦いに邁進してしまいます。正直、第28話、花火の材料の草を引く抜く三択を「勘」だけで正解に導いたのには呆れました。側に植物と縁のあるはーちゃんがいたのだから、彼女にフォローさせるなり抜かせるなりすればいいのですし、その気になれば三種全部抜いてきて最悪犠牲者を二人出すという選択肢だってあった訳です。ここでみらいをラッキーガールに仕立てる意図が分からない。

結局、そういう所も含めて、みらいには「これは!」というバックグラウンドが存在しなかったんですね。

何故戦士としての素養が高いのか、何故友人とのつながりに固執するのか、何故そこまでラッキーが続くのか。

全話終了してしまったので結論から言えば、みらいに特別な境遇はありませんでしたが、私自身はかなり後半まで実はみらいの出生には秘密があるのでは…と考えていました。それぐらい完璧…というか弱点欠点が存在しなかった。

唯一の弱点となりえたモフルンも敵側が最後まで手を出す事もなく、メインキャラクターであるがゆえにリコとの間に何かを起こす訳にもいかない。結局、リコをはじめとした友人達との関係だけが独り歩きする形となりました。

しかし、個人的に実質最終話だと思っている第49話、ついにみらいの本質が出ましたね。

それは徹底的なひたむきさ。

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考えてみると、第49話はそれまでみらいにとって最も大切な存在だったリコ・はーちゃん・モフルンと別離した訳で、彼女らとのつながりを求めて再び夜中の公園で泣きながら呪文の詠唱を繰り返した彼女の姿こそ、みらいという少女の弱さであり、人と人とのつながりをひたむきに追い求めるのが彼女の本質だったのですね。

この話があったからこそ、みらいは辛うじてプリキュアヒロインとしての立ち位置を保つ事が出来たと個人的には思います。こういうひたむきさをもっと前半に出していればもっと好感が持てたのになあ、というのが感想でした。最後の最後で一気にやられても…演出のしくじり、何より1年という長いスパンのプリキュアシリーズの弊害をもろに受けた悲劇のヒロイン、それが朝比奈みらいだったのかな、と感じました。

 

バックグラウンドがしっかりしたもう一人のメインヒロイン:十六夜リコ/キュアマジカル

対して、もう一人のメインヒロインのリコですが、彼女には明確なバックグラウンドが存在しました。

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前半の少し意地っ張りで頑固な性格は、姉のリズに対するコンプレックスに起因していましたし、父親のリアンや母親のリリアなど個性的ながら暖かい家族に囲まれた故の性格が良く表現されていました。一時期は魔法商店街の面々に可愛がられていたり、姉へのコンプレックス、両親が顔を隠しての登場、などの事情から家庭不和を疑いましたが、実際は家族全員が仕事に忙しいために淋しい思いをしていただけであり、愛情はむしろたっぷり注がれて成長した様が上手に描かれました。

そして、なによりみらいという親友を得た事により、少し陰にこもりがちで自信を持てないが故の意地っ張りな性格が徐々に改善され、最後には一流の魔法使いとして歩み始めた姿を見せてくれました。

将来の夢を語るキャラとしては一番向いていたキャラだとも思いましたが、そこら辺が描かれていなかったのはちょっと残念ではありました。が、元々、そういう事をメインテーマに据えたGoプリンセスプリキュアとはベクトルの違う作品である事を鑑みて、姉の後を追って教師の道を志したのは良い落としどころだったと思います。生徒会長立候補回でリーダーシップやカリスマ性がある事も描かれていましたしね。

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反面、戦闘シーンに関しては、キュアミラクル共々どうしてもキュアフェリーチェに食われてしまう場面が多く、本来の立ち位置である「知的な戦闘要員」を活かすことは出来ませんでした。前半はそれなりに頭を使う場面もあったんだけれどねえ。

個人的には今作品で最も好きなキャラクターであり、一番プリキュアとして成長する姿がうれしいキャラクターでもありました。

 

どうしても浮いた存在:はーちゃん(花海ことは)/キュアフェリーチェ

個人的にこのキャラクターは色んな意味でキャラクター作りの難しさを感じた娘であり、複雑な感情を抱いています。

序盤は赤ちゃんからスタートして、イヤイヤ期を経て次第に可愛く成長していく様が微笑しかったのですが、みらい・リコと同じ等身になると、他の二人とは明らかにコンセプトが違うデザイン、パワーバランスの明らかな崩壊、精神年齢が幼いが故の個性のなさ、悪くないはずのキャラクターなのに、何故かちぐはぐな印象が最後まで拭えませんでした。

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彼女の実力はキュアミラクル・マジカルより頭一つ図抜けており、今作品の戦闘シーンをつまらないものにした一因を確実に担っていました。が、戦闘バランスについては後述したいと思います。

話を戻すと、ちぐはぐな印象を受けたのは、私が思うにこの作品のメインテーマにはーちゃんがイマイチ合致していなかったのが原因ではないかと推察しています。

と言うのも、この作品のメインテーマの一つに、初代ふたりはプリキュアの復刻が盛り込まれていたと思われるからです。変身シーンの手つなぎもそうですし、最終メンツが(MaxHeartも含めて)3人になるのも同じ。何よりみらいとリコの友情は、なぎさとほのかを彷彿とさせるには十分であり、序盤に対立シーンがあるのもオマージュとなっています。

ただ、この二人をメインに据える手法は初代の流れを引き継いだSplashStarは置いておくにしても、5以降の多人数群像劇プリキュアであるスイートプリキュアハピネスチャージプリキュアでも採用された方式であり、実は別段珍しいという訳ではありません。

しかし、それらの過去作品が途中で方向転換し、二人からチームへ、という過程を踏んでいくのに対して、今作まほプリはどうしても最後までキュアフェリーチェは二人に対しての+αに過ぎない感覚が残りました。

これは上でも述べた通り、明らかに違うキャラデザインもそうですし、戦闘におけるパワーバランスもそうです。戦闘シーンでも、二人とは違う必殺技がわざわざ用意されており、しかもこれが二人で協力して放つ必殺技と互角かそれ以上、おまけにキュアフェリーチェ登場時から暫く連続してこれでのとどめが続くという別格さがいやと言う程演出されました。後半に登場した、オーバー・ザ・レインボー(以下OTR)モードでようやく三人同時に放つ必殺技が出たほどでしたが、最終戦間近では実は神に近しい存在であるマザー・ラパーパの後継者であることが判明、その力を受け継いだためまたしても二人とは違う立ち位置を得る結果となりました。

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要するに何が言いたいかと言うと、はーちゃんは結局最後まで、みらい・リコとは等身大のキャラとして並ぶ事が出来なかったのですね。

赤ちゃん状態からみらい・リコと同程度まで肉体が急成長こそしましたが、精神性は幼い子供のままでしたし(それ故のデリカシーのなさが出る場面がたびたびあった)、結局最後は人間より高次元の存在となり果ててしまいました。

そこに壁のない事を強調するのがまほプリのテーマの一つだったのは十分承知していますが、あまりにもはーちゃんを特別視し過ぎたのは失敗だったと思います。せめてキュアフェリーチェのデザインが異質でなければ、この違和感はだいぶ薄まったかと思うのですが、OTRモードのデザインですらこの異質さは残ったままであり、デザインでだいぶ損をしたイメージでしたね。

ただ、普段は天真爛漫で純真なはーちゃんが、キュアフェリーチェに変身すると一転、冷静で大人びた雰囲気の戦士に変貌する設定は嫌いではなかったです。ただ、みらいやリコの間に割って入れるだけの魅力は残念ながらなかった。それがこのキャラクター最大の弱点だったのかもしれませんね。

 

敵キャラについて

今作は敵の勢力が二つあり、それぞれにボスと幹部がいる構成でしたが、あまりに数が多く、非常に散漫な印象を受けました。

それでも、前半部の敵組織・ドクロクシー一味は、戦略家で野心家のスパルダ、忠誠心のバッティ、武人のガメッツに参謀役のヤモーとそれなりに個性的だったのですが、基本戦術がヨクバールをけしかけるだけという、全く工夫のない戦い方に終始したため、途中退場した事も踏まえて、どうしても弱組織の印象が拭えなかったです。

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唯一、スパルダのみが蜘蛛の糸を使用したトリッキーな攻撃やプリキュアの戦況分析をしたためまともに見えたのですが、いち早く粛清されたキャラでもあり、最後は自身をヨクバール化させての力押しを敢行するなど、不遇な感じでしたね。

後半部のデウスマストの眷属たちは、ラブーこそ陰でヤモーを操ったり、巨大化した際にまほプリチームをもっとも苦しめたバトル回を展開したので存在感がありましたが、ドンヨクバールがやられるたびに退散する他幹部たちには流石に「おいおい」と思わざるを得ませんでした。

せめて、過去作品の幹部の様にコミカルな面があったり、怪物がプリキュア達を追い詰めていたにも拘らず逆転されて仕方なく退却する、みたいな演出があれば良かったのですが、今作品の怪物は全くと言っていいレベルでいい所がなく、幹部たちは「尻尾を巻いて逃げただけ」にしか見えなかったんですよね。

そして、最もがっかりだったのが、オルーバでした。プリキュア達の戦力を分析し、スパイを送り込み、ドクロクシー一味を復活までさせて、戦いに臨んだというのに結局最後はドクロクシー一味の離反があったとはいえプッツンして力押しをした挙句、OTRモードのまほプリチームに為す術もなく倒されるというどうにもならない結果となりました。そもそも、キュアフェリーチェがかつて自身を封印したマザー・ラパーパの縁者だと気が付いていたのに、どこをどうすれば真っ向勝負で勝てると思ったんでしょうか?*3

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策士タイプなら策士タイプらしくもっと思慮深いキャラにしてほしかったですね。モフルンの秘密にまで迫っておきながら、それを誘拐してまでは良かったものの、まほプリチームをおびき寄せるためにしか使わないとか下策も下策でしょう。少しはクローズ様を見習えよ(がみがみ)。

他にも何がやりたいのか良く分からないベニーギョや冷静かと思いきや単なる脳筋だったシャーキンスなど、デウスマスト陣営はイマイチ魅力に欠ける幹部ばかりで、声優さんの豪華さだけが目立つまことに困ったちゃん達だった気がします。

結局、個々としてもそれほどの魅力はない上に、全員が大ボス(ドクロクシーやデウスマスト)に絶対の忠誠を誓っている点は共通しており、そういう点も没個性に拍車をかけていた気がします。幹部で面白かったのは今までにありそうでなかった完全武人タイプのガメッツぐらいのもので、両陣営ともその大ボスの一面を授けられた存在ですから忠誠心があるのが当たり前(特にデウスマスト陣営は眷属そのものがデウスマストの一部だった)なのでしょうが、ステレオタイプから脱せなかった、もしくはそれ以下な者ばかりでした。

これらに加えて戦闘の緊張感のなさが、この作品を締まらないものにした要因の一つかと思います。

 

サブキャラクター達

実はメインキャラクターの項目に入れようかと思ったのですが、一応妖精枠なのでサブキャラの方で言及する事になったモフルンですが、メイン3人に勝るとも劣らないキーパーソンであり、非常に面白いキャラクターでした。

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モフルンは変身シーンでみらいとリコの間に入って手をつなぐ事でも象徴されている通り、マホウ界とナシマホウ界の橋渡し的な存在であり、主にみらいをはじめとして皆の愛情を注がれたことによって誕生した付喪神的な存在です。

今までの妖精枠の様にいつしか隅に追いやられるような扱いもなく、最後まで一級品の扱いを受けた良いキャラクターでした。様々なキャラクターとの交流もしっかり描かれており、かわいさも申し分なく良く妖精枠を揶揄して言う「淫獣」扱いから見事脱する事が出来た稀有のキャラクターです。

ただ、惜しむらくは良い魔法を感知する能力「甘い匂いがするモフ」が若干ご都合主義的に使われた事で、この点は残念ではありました。

モフルンについて言及するには筆者が未視聴のキュアモフルンの映画版を見る必要性があり、これを見る事によって更に深くなるキャラクターなのだと感じており、これ以上は論ずる事が出来ない事が悔やまれます。

 

校長先生はまほプリチームの良き理解者であり、協力者としてもドクロクシーに単身立ち向かうなど非常にキャラが立っていました。若い姿でありながら、かなりの高齢である為喋り方が爺言葉だったのもキャラ立ちに一役買っていましたね。

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若干、まほプリチームを甘やかし過ぎのきらいはありましたが、どちらかと言うと彼女たちより上の存在でありながら、ブルーやアフロディーテよりはジョー岡田や誠司に似たポジションでしたね。

初期に魔法を頑なに使わなかったり、リンクルストーン・エメラルドを欲していたことから怪しいキャラクターと思われていましたが、それも話の流れできちんと説明付けがされており、非常に好感が持てたキャラクターでした。

ただ、野太い声で「キュアップ・ラパパ!」って言うの止めて(苦笑)。

 

補習組の三人は特に明確な夢を描かれなかったメインキャラクターと違い、夢を追う姿を明示したキャラクター達でした。

初期の補習シナリオでは、メインのみらい・リコの話に比重が傾いてしまい、彼女たちが抱えていた問題が脇に追いやられる展開でしたが、再登場した辺りから、各々が目標を見据えた描写がなされ、最終話では各々がその目標に邁進する様が描かれました。

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ナシマホウ界の友人らとの交流も描かれ、非常に良い距離感を持ったサブキャラだと感じました。サブキャラはあまり深く描いてしまうと、前作のゆいちゃんの様に割を食ってしまう可能性もありますし、この辺りがキャラ造形としては落としどころなのかな、と勉強になったキャラでもありました。

 

勝木さんとまゆみちゃんは、勝木さんが当初は魔法使いを度々目撃するものの会うことは出来ないというコミックリリーフの側面が強調されました。

しかし、シナリオが進むごとに、まほプリチームの仲良しをオマージュするためのナシマホウ界側の代表キャラである事が描写されました。

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あまり目立つキャラクターではなかったですが、第46話のクリスマス回に勝木さんの過去とまゆみちゃんとの友情、そして彼女なりの回答が得られるというなかなかの演出が見られたのは良かったです。

ただ、勝木さんの様なキャラクターがいたにもかかわらず、ナシマホウ界に於いてはまほプリチームは久々に最終局面で身バレしなかったプリキュアだったんですね。当然、最後は身バレするものばかりだと思っていたので、これは意外でした。ただ、まほプリチームはあれだけ迂闊な行動を取りまくったプリキュアなのに身バレしなかったのはある意味不自然とも感じましたね。

 

大切な所を省くシナリオ

今作品において、個人的に最も不満だったのがこの点です。

しかも良くない事に、序盤、中盤、終盤それぞれに「おいおい、ちょっと待てよ!」レベルの説明不足があり、これはこの作品の評価を大きく下げる結果になりました。

 

序盤はやはり、リンクルストーン・トパーズの出現のし方でした。

まほプリ序盤は合計12個あるリンクルストーンを捜索するのがシナリオのメインプロットでしたが、トパーズはサファイア・ルビーと同格の変身に関わる重要なリンクルストーンの一つであり、当然入手には苦労があるものだと推察されました。

しかし、蓋を開けてみると、マホウ界から津奈木駅に戻った際に道端に落ちているのを烏が咥えて飛び去るという、何ともびっくりな登場の仕方をしてしまいました。他の支えのリンクルストーンならまだしも、最重要アイテムがですよ。

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しかも、トパーズ自体も烏から猫にバトンタッチした挙句、モフルンの「甘い匂いがするモフ」で学校の中であっさり見つかるという衝撃の展開。2話分使ってこれとは…とずっこけたのを今でも覚えています。

何故、トパーズのみがナシマホウ界にあったのか、しかも偶然それを駅に降り立ったばかりのみらい・リコの目の前に現れたのか、ここら辺が全く説明されていない。これはダメでしょう。

 

中盤はやはりレインボーキャリッジの登場のし方でしたね。

シンデレラを模したモフデレラという夢をまほプリメンバー共通で見て、その中で登場したガラスの馬車が現実にそのまま持ち込まれた…という内容でしたが、最終決戦にまで使用した最重要アイテムが、何の脈絡もない夢オチで手に入るというのは、粗いどころの話じゃない。

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夢を見る事の切欠になった、魔法図書館蔵のシンデレラの絵本がレインボーキャリッジが封印された特殊な本だったというのが一番考えられる線ですが、それだと偶然にその本を手に取ったみらい達に「またかよ!」というツッコミを入れずにはいられません。ただし、終盤の展開で分かった事なのですが、まほプリチームはどうも要所要所でマザー・ラパーパに導かれていた節があり、それならばやたらと彼女たちにラッキーが続いたのも納得は出来ます。

ただ、それでいいんか…と思ってしまったのは紛れもない事実でしたね。

 

そして終盤、というか最後の展開。

一度分かたれたはずのマホウ界とナシマホウ界に再び接点が生まれた事に一切の説明はありませんでした。

私はこういう文章を書くようなタイプですから、検証好きだろうと思われるかもしれませんが、実は決してそれ一辺倒という訳ではありません。結構「視聴者の想像に任せます」というタイプのお話も大好きで、例えば少し脱線しますがドラゴンクエストⅣのエンディングなんかは大好きだったりします。

滅ぼされた故郷に勇者が帰ると、犠牲になったはずのシンシアが目の前で復活する、というものなのですが、あれは私自身は「神が勇者に最後の贈り物をした」という解釈なんですよね。

ところが、これには色々な解釈があって「勇者の見た幻(もしくは霊)説」もあったりしますし、私の友人は「あの段階で勇者はザオラルが使える、呪文を使って復活させたのでは」という解釈をしていました。

要するに、検証の立場からすれば「ザオラル説」なんかは面白いと思うんですが、個人的にはそういう所は神の奇跡を推したい派だったりするんです。

話を戻すと、私はこういう人間なので、第49話の最後の場面で二つの世界・みらいとリコが再び接点を持てたのは、みらいが起こした最後の奇跡だった、という抒情的な内容だったとしても個人的には問題なかったんです。

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ところが、ここで第50話というおまけ回を入れた事により、そして再びマホウ界を訪れた事により、この抒情的で幻想的な結末はぶち壊されてしまいました。平穏としたマホウ界を見せられれば、流石に「なんで、二つの世界は再び接点を持ったのか?」という疑問が再燃してしまいます。が、結局、それも描かれずじまいでした。少なくともマホウ界が二つの世界の再接に行動した描写は皆無でした。

結局、一度幻想の世界で締めた物語を再び現実に引き戻す(アニメにこういう表現を使うのも変な話だが)という愚行を犯してしまった。

 

これ以外にも説明不足は枚挙にいとまがないほどで、細々した指摘をすればきりがありませんが、そういう所に目をつぶったとしても上記の様な大きなシナリオ欠陥を抱えており、魔法という不可思議な力をテーマにしたとは言え、いくらなんでも「魔法だから」で片づけるにはお粗末な展開が多すぎました。素材は良かっただけに本当に勿体ない事をしていると思います。

 

お粗末な戦闘シーン

戦闘シーンに関しては、これはもう明確に失敗だったと断言しても良いと思います。

それでも、序盤はまだ迫力ある戦闘シーンが楽しめたのですが、魔法使いでありながら殴る蹴るのオンパレードであり、最後こそ飛び道具系の必殺技を放つものの、補助系の魔法すらほとんど使わない*4という武闘派ぶりであり、いくら徒手空拳メインのプリキュアシリーズとは言え、なんだこの戦闘魔法使いは、と苦笑したものです。

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トパーズモードが登場してからはトパーズモードそのものが臨機応変型のスタイルであった事からこの欠点がいくらか和らぎましたが、四種のモードが使用可能になると今度は敵毎に「なぜそのモードを使用するのか?」という説明が一切なく、なんか気分でモードを選んでいるだけでは? という非常に困った現象が見られるようになりました。*5

中盤から入手した支えのリンクルストーンが使用可能になると、若干補助的な使い方がなされましたが、その頃には武闘派魔法使いのイメージが定着してしまっており、もうあまり視界に入らない…という感じでした。個人的にはガーネットを使用したスネア(足掴み)なんかは嫌いではなかったですけどね。

そして何よりまずかったのが、キュアフェリーチェの参戦により、元々それほど苦戦する事がなかった戦闘バランスが更に崩れた事でした。

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当然、全てのリンクルストーンの頂点に位置するエメラルドで変身するキュアフェリーチェが図抜けているのは理解できるのですが、彼女が登場してからOTRモードが登場するまでの間、敵を浄化する最後の必殺技を彼女が担当し、その間キュアミラクル・マジカルが足止めするという展開が続いたため、キュアフェリーチェ無双状態が形成されてしまいました。

更に不味かったのがOTRモードで放たれるプリキュア・エクストリーム・レインボーです。この必殺技はなんとデウスマストとの最終戦闘ですら効果を発揮してしまい(正確にはパワーアップ版だが)、プリキュアシリーズのレギュラー必殺技としては不敗という記録を打ち立ててしまいました。

この様に、殆どの戦いが楽勝レベルであり、苦戦を強いられたのはガメッツ魔法戦士形態、ドクロクシー最終形態とラブー巨大化の時ぐらいのもので、しかもこの段階ではOTRモードは存在しませんでした。しかも、ラブー巨大化はOTRモード覚醒の切欠になった上に、プリキュア・エクストリーム・レインボーでとどめを刺されていますし、後に復活したガメッツに至っては初手合わせのキュアフェリーチェ一人に魔法戦士形態であったにも関わらず軽くいなされていたような状態で、もうこのプリキュアいればどうとでもなっちゃうんじゃない? という緊張感のなさです。当然、雑魚敵だったヨクバールやドンヨクバールに苦戦するシーンはとうとう一回もありませんでした。

別にプリキュアが苦しむ姿を見たいわけではありませんが、ここまで戦闘シーンが楽勝レベルになると流石にどっちらけというか、はいはい強い強い、という感情しか湧きません。デウスマスト戦も最終話1話手前の前半も前半で大した苦戦をする事もなくあっさり決着がついてしまっており、正直ぬるかったとしか言いようがないです。

更に言わせてもらえば、前半の武闘派ぶりと必殺技の派手さが災いして、敵をプリキュア本来のテーマである「浄化」ではなく一方的に打ちのめしているように見えたのも不味かったと思います。

ただし、ここらへんはスタッフ側もまずいと感じたのか、キュアフェリーチェの必殺技以降はヨクバールやドンヨクバールの元になった道具が分離する描写(=浄化)が強調されましたし、最終話で暴れたヤミーに対しては、明確に虫歯の治療をするという癒しの力も見せてくれました。この辺りを是正してくれたのは好印象でした。*6

 

印象に残らない音楽

プリキュアシリーズの魅力の一つに音楽のレベルの高さがあると思います。

特に変身BGMは毎回非常に出来が良く、何度聞いても飽きないし今でもほとんど作品の曲を口ずさむことが可能だったりします。特に前作Goプリンセスプリキュアと音楽を題材にしたスイートプリキュアの変身BGMは素晴らしいの一言です。

しかし、今作品は残念ながら全くと言っていいレベルで頭に残りませんでした。正直、どうしちゃったの? という感じです。

もちろん、1年間聴かされ続けた訳で丸っきり記憶に残らないという訳ではありません。N●Kの番組などではよくプリキュアシリーズのBGMが使用されることがあり、先日見た番組内でダイヤモードの変身BGMがかかった時は「まほプリやん!」と一人ツッコミをしたものです(笑)。

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しかし、それは聞けば分かる…程度のものでありやはり頭に残ったとは言い難い。試しにこの原稿を書きながら、曲を必死に思い出し口ずさんでみましたが、辛うじて出来たのはトパーズモードの曲ぐらい。これも出だしのリズミカルな調子のインパクトが強いから、といった感じで少なくともメロディアスではないですよね。*7

これはメインの変身モードに対応して複数曲が用意されており、どうしても散漫な感じになってしまったのも大きいと思うのですが、メインのダイヤモード一つとっても途中で変調を挟んだりするものの、どうしても頭に残らず…なんというのか、サビに当たる部分がないのっぺりしたBGMという感じなんです。

これはメイン4曲がすべて同じメロディを使用したアレンジで構成されているのも大きかったのかな、とも感じます。音の使い方を狭めてしまったというか。その証拠にこの縛りがないキュアフェリーチェの変身曲は過去作品の変身曲にイメージが近いです。ただ、この曲あんまりかからなかったのよね。

変身BGM以外に目を向けると、やはりOP曲は非常に出来が良く、目が(耳が)行きがちでした。最初こそ今までにない出だしで違和感を感じましたが、テンポが良くメリハリの効いた聞けば聞くほど味のあるスルメの様な曲でした。後期の2番(?)も良かったです。

反面、特に後期のEDなんですが、曲調がバラバラでイマイチ印象は良くありませんでした。なんか思いついた細かいメロディを適当に繋いで無理矢理整合性を持たせたみたいな感じで、まあ悪い言い方するとすごくデジタルチックな曲だなあ、と。

とにかく音楽に記憶に残らない、というのは残念な要素でしたね。決してレベルが低かった訳じゃないんですが…

 

では美点は?

ここまでほとんど批判意見ばかり書いてきて疲れてしまい、精神衛生上非常に良くないので、褒められる点も書いていこうかと思います。

まずキャラクターデザインのキャッチーさ。

みらい・リコのデザインはその髪色から初代ふたりはプリキュアの二人を意識したかと思われますが、初代と同じく見た目の対比が素晴らしく、また非常に今風の可愛いデザインで描かれました。作画崩壊もあまりなく、これは間違いなく歴代トップレベルかと思います。

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また、キュアミラクル・マジカルに変身する際、明らかに成長の要素が加わっており、非常に色気がありました。幼児向けアニメにそれはどうなのか、と思いつつ、特にルビーモードの変身バンクは色気全開であり、TVの前で「なんだよ、それ、少女たち…エロい…エロ過ぎるよ…」と何度も呟く羽目になりました(笑)。

途中から加入したはーちゃんは幼い頃はマスコット的な可愛さがあり、特に七変化回は非常に愛くるしく好感が持てました。みらいやリコと等身大に成長した後は、純真無垢という要素はモフルンも持っていたため若干没個性に沈んだ感がありましたが、キュアフェリーチェに変身した際の大人びた雰囲気と強さのギャップが魅力であり(OP2番にもその様な歌詞がある)、ここらへんは声を担当した早見沙織さんの演技が光りましたね。

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早見沙織さんと言えば私は艦これの萩風で初めて意識した声優さんでしたが、少し柔らか目(というか今流行のキンキン声ではない、という事)の独特な声の持ち主でありながら、はーちゃんの様なかわいい声も使い分けられ、こういう二面性を持ったキャラクターには非常にマッチしていた思います。

考えてみると、この作品は、若いながらも病に倒れた声優さんの代役を務めるほどの実力を持つ高橋季依さん(みらい・キュアミラクル)やベテランの堀江由衣さん(リコ・キュアマジカル)など声優さんは非常に豪華で、敵役も中田譲治さん速水奨さんなど他にも錚々たるメンバーを揃えており、この点では安心して見ていられました。前作の榊原良子さんの時も思いましたが、一流声優さんの演技はやはり唸らずにはいられませんね。感情の込め方というか演技力の幅が凄まじい。

補習三人組や校長先生、モフルンなど、脇を固めるキャラクターも非常に良く描かれており好感が持てました。デザイン、演技、全てにおいて優れており世界観を表すのに一役買っていました。

後は設定が思いの外凝っていたのも個人的には好感が持てました。

特に後半の闇の魔法とムホーとの関連性や、マザー・ラパーパとデウスマスト、そしてそれをとりまくプリキュアの設定は感心させられました。

プリキュアは元々、世界を救う救世主であり戦士である属性を与えられる事が普通ですが、今作は2つの世界を再び繋ぐための存在という側面をマザー・ラパーパに与えられていたのは面白かったと思います。

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何より、後半に一気に明かされた設定を今一度思い返してみると、前半にどうにも不自然だった現象の数々*8には納得のいくものも多く、最初からしっかりした設定に基づいてシナリオを展開したのが伺えます。ただ、その設定ばらしをするのが徐々に…ではなかったため遅きに失したのが惜しかったですね。それでも、この作品の数々の設定は決して嫌いではなかったですよ。

 

まとめ

結局のところ、今回私が一番感じたのは、色々な事を詰め込み過ぎて欲張り過ぎてしまったが故に齟齬が生じた作品である、という事でした。*9

これはみらいに様々な属性を付加させようとしたこともそうですし、個人のプリキュアに4つ(アレキサンドライトまで含めれば5つ)ものモードを設定したり、シナリオの要の一つリンクルストーンを13個も用意したり、途中で出たリンクルストーン対応のグミ精霊もそう。敵も2つの勢力が出現し幹部も8人にも及ぶという過去最高の数字でした。

これだけの要素を50話に詰め込もうとしても、一つ一つが薄くなってしまうのは仕方ないかと思います。そうかと思えば、あまりシナリオに絡まないおまけ回も結構あり、スケジュールが詰め詰めになって自ら首を絞めたイメージです。*10

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最終話も次世代プリキュアに引き継ぎをするイベント+サービス回の色合いが強く、これのために最終戦であるデウスマスト戦があっさり決着してしまったのは、流石に迫力不足が否めませんでした。

確かにプリキュアシリーズは10年を軽く超えるロングランシリーズですし、一年という長いスパンが確定している作品ですから、色々な要素を絡めたくなるのは分かるのですが、それも期間内で捌き切れればの話であり、今回は明らかに色々面白くなったであろう設定がありながら、その数の多さから溢れてしまう結果となりました。非常に勿体ない作品だったという論評を以て総評を締めさせていただきたいと思います。

 

余談ですが、そういう点でも、次回作である「キラキラプリキュアアラモード」はキャラクターに複数要素を早速盛り込んでおり、非常に不安です。特に青プリキュア枠に当たるキュアジェラートは、ライオンモチーフの元気娘という設定でありながら、寒色系の青色に冷たいお菓子であるジェラートを充てるというデザインミスをしており、早くも暗雲が垂れ込めている気がします。ここら辺は見てみないと分かりませんから、最初の展開を楽しみにしたいとは思っていますが。

 

最後にお知らせです

さて、プリキュアシリーズを中心に細々とやってきた当ブログですが、実は一時休止を考えています。

理由はいくつかありますが、直球な言い方をすると、ヒット数が全く伸びず、モチベーションの維持が難しくなってきたことが挙げられます。数は明かせませんが、正直これで日曜日の貴重な2時間が失われていくのは現状かなりツラくなってきました。

更にPCの不調が重なりました。能力の低さもさることながら、特にWindows10にアップグレードしてからはまともに動かす事すら困難になってきており、ブログを書くだけなら出来ても、他の作業を並行して行うことが困難となりました。少なくとも新パソコンを購入しない限りスムーズな更新は困難な状況です。

この様な状況から、ブログの一時休止を残念ながら検討しています。しかし、プリキュアの感想を書く事自体は嫌いではないため、来週の「キラキラプリキュアアラモード」放映開始までに決めたいと思います。

正式に一時休止する場合、改めて告知いたしますので、その際はよろしくお願いいたします。

 

それでは長くなりましたが、この辺りで失礼させていただこうかと思います。

*1:去年のGoプリンセスプリキュアは途中からのスタートだった。

*2:第30話の補習組の課題道具や第39話のアドバルーンなど

*3:しかもドクロクシー一味を離反させたのは明らかにオルーバ自身の人心掌握ミス。

*4:あっても箒を足場にしたりする程度だった

*5:モードを選んだ理由が想像できたのは正々堂々の戦いを希望したガメッツに対してパワータイプのルビーモードを使用した時ぐらいか。

*6:ただ、OTRモードのプリキュア・エクストリーム・レインボーはベニーギョに放った際、太陽に封印する様な描写が見られ、やはり浄化とは言い難い性質があった。

*7:過去作品の変身BGMはメロディアスなものが多い。

*8:みらいの魔法の杖が大樹産だった事、次々に導かれる様に必要な場所に行くラッキーさ、ヨクバールとドンヨクバールの関連性、記憶にない行動を取るはーちゃん等々

*9:今作の怪物の名前が(ドン)ヨクバールだっただけに笑えない。

*10:似たような失敗はスイートプリキュアの音符精霊でも犯しているが、それでも今回の要素数に比べれば遥かに少ない。