ふらあそ!

ゲーム好き・漫画アニメ好き・自転車好き・鉄旅好き。インドアだったりアウトドアだったりのふらふら遊び人の日記帳、略してふらあそ!

【アニメ】トロピカル〜ジュ!プリキュア/総評

f:id:furafuraasobinin:20220204124242j:plainなんか、もうローラのあの盛り盛り態度が見れなくなると思うと、寂しくなりますね…(´;ω;`)

さて、先日大団円を迎えたトロプリ。もっと見ていたかった、というのも、まあ、毎年の風物詩みたいなものですかね。早速総評に入らせていただきたいと思いますが、まずは楽しい一年を送らせていただいたスタッフ一同に感謝を。

 

↓以下長文注意↓

 

 

密度が濃かった!

最後まで見終えて、まず最初に思ったのはこれでした。

プリキュアシリーズは4クール、50話前後という長いスパンで進行していくシリーズですが、それが故に途中中だるみやあまり関係ないシナリオが挟まれたり、それが故にスケジュールのバランスが崩れて、妙に間延びしたり拙速になったりする話が挿入されてしまいがちです。

しかし、今作に関しては、そういう話がほぼなかった。途中に入ったカオス回・33話、総集編だった41話は、双方ともシナリオからは完全に切り離されており、しかもそれが作品に影響を与えるようなものではなかったため、気持ちを切らされる事なく見る事が出来ました。

そして、一話一話の中身が濃い。かといって詰め込み過ぎという訳ではなく、なんというか、無駄な部分を極力削ってシナリオ作りをしてるような印象を受けました。起承転結がしっかりしており、毎話毎話、きっちりギャグを詰め込みながらシリアスはシリアスに、ほんわかはほんわかに、ひたすらオチまで突っ走る。あえて言うと、戦闘シーンの入り方が少々雑な話が散見された程度。何より全話見て驚いたのが、今作はとうとう面白い話しかなかった、と個人的に思わせた事です。本当に、つまらない、と思った話が一つもなかった。*1これは凄い事です。

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これは、筆者自身のこのブログでのやり方なのですが、まずは視聴しながら、メモ書きをして、それを見ながら数話分まとめて雑感をアップする、という形になっています。しかし、今回はこのメモ書きが追っつかないんです。情報量が多すぎて。特に作中後半の密度は凄まじく、視聴後にTverなどで確認しながら、追記をしていく(本文記事ではなくメモ書きを、ですよ!!)という事態にすらなりました。

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更にシナリオの流れそのものも上手だった。というのも、日常生活に「部活」をうまく絡めたんですよね、今作は。一見、中だるみしやすそうな日常パートを部活動という枠で説得力を持たせているんです。ましてや、トロピカる部は何かに特化している部活という訳ではなく、部是は「今やりたいことをやる」ですし、口さがない事を言うと「何でも屋」です*2。でも、だからこそ、日常パートでの何気ない活動が活きる。例え一見大きな動きがなさそうな話でも目が離せない。最終盤には学園全体の一大イベンターとして百合子からも評価されていましたが、長いスパンをキャラクターだけではなく、部活としての成長物語としても見せる巧みな手法だったと思います。

 

「全44話」という物語に対する是非

さて、コロナウィルス蔓延という状況の中、前作ヒープリが短絡化と延期を余儀なくされ、その調整として今作は3月スタート1月末エンド、話数は全46話、うち2話は本編と全く絡まないオマケ回だったため、実質全44話、というのが筆者の考えです。

これは総評をまとめる際にいつも思う事なのですが「この作品は果たして4クール必要だったのか? もっとコンパクトにする事が出来たのではないか?」というものです。

それはもちろん、作品によって異なります。例えば5+1人体制だったプリアラは「足りない」と感じましたし、逆にスマプリやハピチャなどは結構間延びしていた印象を受けています。逆にゴプリはちょうどいい塩梅だったと感じます。

とは言え、いい悪いは置いておいて同一シリーズに4クール、一年というのはやはり長い。それが長年続いているアニメシリーズ(例えば「サザエさん」や「ちびまる子ちゃん」)の様な一話完結形式ならばともかく、一年通してのストーリーテロップがきっちりあるのですから。総評はその辺りを思い出しながら書かなくてはならないため、余計そう感じるのかもしれません。

さて、話を戻すと、今作に関してはプリキュアシリーズのストーリーの短絡化…というか圧縮化は出来る、という確信を得るに至りました。上でも書いたように、この作品程度のシナリオの濃縮化をすれば長い期間を利用する事で更なる深堀りが可能なのではないかな、と。具体的には3クール化が可能なのでは? と考えさせられました。

…いや、本当に3クール化してほしい訳ではないですよ? 出来れば長い時間プリキュアシリーズを見ていたい気持ちはあります。ただ、毎回思うのはプリキュアシリーズってやはりどこかに中だるみや急展開みたいなものが発生してしまうのは気になるのですよね。今回はそこに日常パートを部活に絡める、という手法でそれを回避した訳ですが、例えば冗長に感じた作品にはより深く、不足を感じた作品には余裕を、それぞれ持たせることは可能だったのではないかな、と思うのです。まあ、過去作品との比較論めいてくるのでこれ以上の言及は避けますが、今作の密度圧縮はプリキュアシリーズはまだまだ躍進できるんだな、と感じさせられるものでした。それが44話分に詰まっていた。

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そういう点では今作の様に緊張が連続する展開の中で第33話の様な全く脈絡のないギャグ回を挟むのも一つの手法だったんだな、と感じました。

 

これが作風!

今作の記事を作成している時に筆者がやたらと多用した表現に「これが今作の作風」というのがありました。

後述しますが、この作品にも欠点や言葉足らずな部分がなかった訳ではありません。しかし、それらは「この作風なら仕方ないかな」で上手く緩和されていた部分が大きかったと思います。

これは推測なのですが、この作品は未だに終わらない世界的パンデミックを考慮して比較的明るい雰囲気づくりを心掛けていたと思います。*3

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それを最もうまく表していたのがOPで、味方キャラはおろか敵キャラ達までノリノリでダンスをしている、というもので、これが延いては明るい作風、敵キャラまでなんとなくコミカル、というのをちゃんと表現している。初っ端から「作風」作りに成功しているんです。

作品の中身も始まってみれば牽引役のメインヒロイン・まなつがひたすら前向き、というか「今やれることをやる」をモットーに後ろ向きな行動をしない爛漫な性格をベースにして、高慢ながらも可愛くギャグをこなすローラ、常識枠でまなつの明るさに心のわだかまりを捨て去る事に成功したさんご、過去のトラウマを抱えつつもまなつの明るさに引っ張られていくみのり・あすか、と作風、即ち雰囲気づくりを確実に構築していきます。

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そこに「やる気がない」敵側の幹部も合わさり、とにかく緩いながらも明るい作風というのを前面に押し出しました。

後半は後回しの魔女の事情とローラの帰還問題でシリアス路線となりましたが、大きなバトルがなかった後回しの魔女に、最後はローラの地上への帰還という大団円も作風に後押しされて「まあそうなるよね」と笑顔で受け入れられる。この雰囲気作りが本当に上手かった。

納得が出来ない点もない訳ではない、粗を探そうと思えば探せなくもない。でも、この作風を前にしたとき「それはどうでもいい事だなあ」と思わせる。これは作品の根幹「今やるべきことをやろう」「大切なことを後回しにしてはいけない」を最後まで貫き通したからではないかと思うのです。この根幹がしっかりしていたからこそ、多少の不満点など些細な事と吹き飛ばしてしまう。

f:id:furafuraasobinin:20220204132306j:plain第45話の最終決戦で使用されたファイナル技・プリキュアスーパートロピカルパラダイスも他作品だったら失笑モノでしょうに、ゲラゲラ笑ってみた挙句「実にトロプリらしい」で結論されてしまう。こういう「らしい」を作るのは正に一級品だったと感じます。

 

もちろん欠点がなかった訳ではないが…

個人的にいくつか気になった点を。

まず三幹部の魔女側に付いた動機と立ち位置が不明瞭でした。もちろん、作中で不老不死を得て各々の目的を達成するため(チョンギーレ→ずっと料理をしていたい、ヌメリー→医者としての務めを全うしたい、エルダ→子供のままでいたい)というのは語られていたのですが、その割には後回しの魔女と打算的な関係ではなく、最後に離反したのもバトラー(及び世界の破滅を目論むこと)に対して、というもので、最終話の後日談ではエルダが枯れ果てたバトラーの世話をしているシーンまで挿入されています。一見改心したように見えましたが、そもそも利己的な部分は変わっておらず、辛うじてローラの記憶復活に手を添えた事で罪滅ぼしをした、程度の印象であったことが拭えません。かと言って世界の破滅に対しては明確なNo!を突き出しており、根っからの悪人、という訳ではなかった訳ですが。

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次にまなつのキャラクター性の弱さ…というよりはローラがあまりに個性的で強過ぎました。確かにトロピカる部を牽引したのはまなつに他なりませんが、「明るく前向き」で「皆を牽引し」「優しく、他人の意思を尊重する」は他作品の主人公枠(俗に言うピンク枠)でも往々にして見られる傾向で、逆にローラは高慢ながらも次第に皆に絆され態度を軟化、ギャグ枠としても超優秀という個性派で、更に後半のメインストリームに彼女の記憶問題が据えられてシリアスまでこなしてしまったため、どちらが主人公かわからなくなる、という感覚に陥りました。似たような作品にハピチャのめぐみとひめの関係性がありましたが、めぐみは後半では大立ち回りを演じており、最終的にそこまでの違和感はなかったのですよね。

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そのローラにひっかけてなのですが「人魚はプリキュアにはなれない」も最後まで理由は分からずじまいでした。あのままだと「女王(メリジーヌ)が変身できなかったから」以外の理由が見当たらず、ここは少しモヤモヤしましたね。

あと、後半の重要アイテム「記憶除去装置」。これ自体は物語を引き締める良い設定だったのですが、その効果範囲がイマイチ分かりにくいというか、どの程度の能力があるのか不明なのですよね。

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最終話で布石打ちを終わらせていたローラが地上に行きたいという願いを女王が受理したという事は、女王も装置に巻き込まれて記憶を失っていたはずです。もしプリキュア達とローラの関係性を覚えていたら、そもそも許可など出さなかったのでは? と思うのです。しかし、ローラが過去にまなつと出会った記憶を奪われていたことについては女王はきっちり覚えているのですよね。まあ、ここら辺は解釈次第でどうとでもなるのですが*4もう少しわかりやすくした方が良かったかも…やはり記憶除去された周りにも影響が及ぶ、という設定が混乱を招いてしまっていますね。

そういえば女王について気が付いたのですが、最終話の後日談のシーン。当該記事でこの場面

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について「女王の教養の一環としてローラが教鞭を振るっており、それを女王が見守っている」と書いたのですが、よく見ると黒板に足の絵が描いてあり「ローラが人魚たちに人間に変身する術を教えて交流を促している。そしてその授業を女王も受けている」とも解釈できませんか?

女王はかつて南乃島で人間との交流及び「自分も記憶を失っているかもしれない」事を示唆していますし、ローラはまなつに冗談めかしていたとはいえ「記憶除去の掟の撤廃」を打ち出しています。ならば、これは近い将来、人魚と人間が交流をする、というメタファーなのかな? とも感じました。何よりその方がトロプリ「らしい」じゃないですか。

 

120%の難しさ

さて、褒めちぎりましたね。実際、この作品は限りなく100点に近い作品である、と個人的には感じています。

なんですが、この作品が圧倒的に気に入ったか、と問われると実は「そこまでは」というのが素直な感想なんですよね。

確かにシナリオは申し分なかったし、キャラクターも立っていた。布石打ちも万全で破綻がなく、ギャグもシリアスもきっちりこなしました。もちろん不満点がゼロという訳ではないですから百点満点という訳ではないですが、そもそも創作物に於いて満点というものは存在しない、が筆者のモットーでもありますから、実質最高評価と言ってもいいぐらいなんです。

ところで、よく傑作を表現する方法として120点(もしくは105点とかとにかく100点をオーバーする表現)がありますよね。筆者は個人的にあれは100点以上、というより、それとは別の突出した何かが一定の枠をぶち破った表現、と解釈しています。直上で書いたようにそもそも100点は存在しない、というのが自身の主義ですしね。

そういう観点で見た場合、残念ながら、そういう臨界突破はトロプリでは見られなかったかな、というのが個人的な感想です。最後の記憶除去装置とそれにまつわるエピソードはなかなか良かったのですが、もう少し溜めというか、もう一声欲しかった。*5

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プリキュア未経験の人にこの作品をお勧めできるかと言われたら、もちろんお勧めできます。というか、割と最適解ではないか、と思うほどです。それほど隙が少ない作品だった。では、とにかくあなたの好きなプリキュアを一つ教えてください、それを視ますから、と言われたら多分候補には挙がらない。

なんていうんですかね、自分の心の中では、ガンダムのファーストから始まる宇宙世紀シリーズとGガンダムの関係性に近いかな、と感じます。いうまでもなく前者がファースト~、後者がGガンです。トロプリはGガンにはなれなかった、自分の中では。まあ、これはあくまでも自分の感じ方なので、こればっかりは人それぞれなのかもしれません。ちょっと贅沢な事を言っているだけかも、なんてね。

この項目については書くか書かざるか、実は悩みました。なんか無理矢理批判をひねり出しているみたいに見えて。しかし偽わざる気持ちを書かなければ感想、ましてや総評になど意味もありませんので敢えて文章化しました。

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本当に不思議な感覚なんです。ほぼ満点に近い作品なのに、何故かそれ以上の感想が出てこない。実はシリーズ通してこんな感覚に陥ったのは初めてです。再度言いますが贅沢なのかもしれません。ただ、贅沢などという単語が出てしまうほど息の長いシリーズになってしまったのですね、プリキュアシリーズは。どんどん求められているハードルは上がっていくわけで、スタッフ一同には本当に頭が下がる思いでもあります。

 

まとめ

いつもの総評に比べると、短めに終わりましたかね。過去記事の雑感で粗方書きたい事を書いてしまっている、というのもあるのですが、やはり隙が少ない作品だった、というのが大きかった気がします。

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ただ、直上であんなことを書いているにも拘らず、実は「もっと見ていたい、もっとトロピカる部の活動*6が見たい」と強く思わせてくれたのもシリーズで随一でした。それも中途半端に終わったから、などという理由ではなく、きっちり話を決着させた上で、です。それほど彼女たちの未来にわくわくさせられる終わり方をしたんですよね。

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繰り返しになりますが、本当に楽しい一年間を過ごす事が出来ました。特にローラとエルダはとても印象に残るキャラクターとなりましたし、まなつの「今やれることをやる」は腰が重いタイプの筆者にはなかなか考えさせられる台詞でもありました(笑)。

 

f:id:furafuraasobinin:20220204133745j:plain次回作・デリシャスパーティープリキュアは食がテーマという事で、今から楽しみでもあります。キラキラプリキュアアラモード以来ですかね、食メインは。あとは食というとどうしてもハピチャのキュアハニー=ゆうこがイメージになってしまいます。どういう物語の展開になるのかは次週のお楽しみでしょうが、まずはお手並み拝見と行きましょう。

 

さて、書くこともなくなってきましたし、それそろ筆を置こうかと思います。次はデリシャスパーティープリキュアの記事にてお会いしましょう。それでは!

 

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*1:敢えて言うなら総集編だった第41話ぐらい。

*2:特に前半はこの傾向が顕著だった。

*3:スマプリは東日本大震災を受けて明るい作風にした、と言われている。

*4:ローラ幼少時のものは女王は関与していないが、作中ではプリキュア達と女王は出会ってしまっている。

*5:この辺りはまほプリの両世界合体からの流れが上手だった。

*6:あ、あすかは卒業済みか。